第7回:AIは「意味」を理解しているのか?
【シリーズエッセイ(全9回)】意味・意識・AI・人間ーAI時代にマインドフルネスが必要な理由ー
これまで私たちは、
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意味は単なる情報伝達ではなく、受け手の中で再構成されるものであること、 
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わからなさ(もやもや)を抱え続ける力の重要性、 
について考えてきました。
では、今急速に進化しているAIは、果たして「意味」を本当に理解していると言えるのでしょうか?
現在主流のAI――たとえばChatGPTのような大規模言語モデル(LLM)は、膨大な量の文章データを学習し、入力に対して「それらしい」出力を予測する仕組みで動いています。
つまり、AIは、
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過去の膨大なパターンから、 
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最も確率的に適切と思われる応答を 
選んで提示しているにすぎません。
ここにおいて、AIが行っているのは、意味を理解することではなく、パターンに基づく反応だと言えます。
この点について、哲学者ジョン・サールの「中国語の部屋」という思考実験(Searle, 1980)は有名です。
サールは、
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たとえば中国語を理解できない人が、 
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マニュアルに従って適切な中国語の応答を返していたとしても、 
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その人自身は中国語の「意味」を理解しているわけではない、 
と論じました。
AIのふるまいもこれに似ています。適切に応答できるからといって、そこに意味理解があるとは限らないのです。
さらに重要なのは、人間は「わからない状態」を保つことができるという点です。
私たちは、
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まだわかっていない 
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もっと考えたい 
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この情報をどう受け止めるか迷っている 
という「もやもやした状態」にとどまることができます。そしてそのもやもやを抱えながら、新しい意味や解釈を自ら作り出していく力を持っています。
一方、現在のAIは、もやもやを保つことができず、常に何らかの確定した応答を返すという特徴を持っています。わからなさに耐えず、すぐに「答え」を出す。この違いが、AIと人間の本質的な違いの一つです。
さらに、意味を理解するとは、単に情報を受け取ることではありません。
それは、
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世界に対する自分なりのモデルを持ち、 
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そのモデルを揺さぶられたり、修正したりしながら、 
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新たな意味を立ち上げていくプロセス 
なのです。
AIが本当に意味を理解するためには、単なるパターン反応ではなく、自己の内部にモデル(世界観)を持ち、それを育てていく力が必要だと考えられます。
これは、まだ現在の技術では達成されていない領域です。
意味を理解するとは、
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わからなさに耐え、 
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モデルを柔軟に育て、 
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世界と能動的に関わり続けること。 
それは、パターン認識だけでは到達できない、人間ならではの営みなのです。
次回(第8回)では、この「意味を育てる力」が、リーダーシップにおいてどのように重要な役割を果たすのかを考えていきます。
ぜひ引き続きご覧ください!
参考文献
Searle, J. R. (1980). Minds, brains, and programs. Behavioral and Brain Sciences, 3(3), 417–457. https://doi.org/10.1017/S0140525X00005756

 
				 
							 
							 
							 
							 
							 
							
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