第9回:AIを超えるリーダーシップー 意味をつくる力とは何か?
【シリーズエッセイ(全9回)】意味・意識・AI・人間ーAI時代にマインドフルネスが必要な理由ー
これまで私たちは、
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意味とは単なる情報の受け渡しではなく、受け手の中で再構成されるもの
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人間はわからなさ(もやもや)を保ち、新しい意味を育てる力を持つこと
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混沌を保持し、構造を育てるリーダーシップの重要性
について考えてきました。
そして、ここにきて大きな問いが立ち上がります。
AI時代において、人間のリーダーシップにはどんな意味があるのか?
現代のAIは、膨大なデータを分析し、パターンを見つけ、的確な答えを高速で導き出すことができます。
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「何が問題か」が明確なとき、
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「正解に近い答え」を求めるとき、
AIは人間を凌駕する力を発揮します。
しかし、現実のリーダーシップの現場では、問題そのものが曖昧だったり、関わる人々の価値観がバラバラだったり、「正解」が存在しない状況がほとんどです。
つまり、「何が問題かを定義する力」や「まだ見ぬ意味や価値を立ち上げる力」こそが、リーダーには求められているのです。
そして、この力は、現在のAIには持ち得ないものです。
私たち人間は、
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混沌の中にとどまり、
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わからなさを受けとめ、
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新たなモデルや理解を育て、
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そこに意味と構造を立ち上げる
という営みを続けることができます。
これこそが、AI時代における人間リーダーシップの核心だと言えるでしょう。
リーダーに求められる資質は、
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もやもやを抱え続ける忍耐力
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多様な声を受けとめる柔軟性
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見えない可能性に開かれ続ける好奇心
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急いで答えを出さずに意味を育む胆力
です。
そして何より、マインドフルに「今ここ」に気づき続ける意識が土台になります。
リーダーとは、
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答えを知っている人ではなく、
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意味がまだ生まれていない場を守り、
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そこに新しい世界を育てる人。
AIがどれだけ進化しても、この「意味をつくる力」だけは、人間にしか持ち得ない宝物です。
この9回のシリーズでは、
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情報とは何か
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意味とはどのように生まれるのか
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人間とAIの根本的な違い
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わからなさ(モヤモヤ)を保つ力
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意味を育てるリーダーシップとは何か
について考えてきました。
共通していたのは、「意味は単なる情報伝達ではなく、人と人が時間をかけて共に育てるものだ」という視点です。
すぐに答えを求めるのではなく、
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わからなさに耐え、
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多様な視点に耳を傾け、
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新しい意味を静かに育んでいくこと。
この姿勢は、マインドフルネスの実践にも通じています。
マインドフルネスは、
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判断を急がず、
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今ここにある混沌をそのまま見つめる
ための力を養います。
未来において求められるリーダーシップとは、こうした「気づきと忍耐」を土台に、意味を立ち上げる場を守り続ける力ではないでしょうか。
AIの進化を恐れるのではなく、人間にしかできない営みを、これからも静かに、しなやかに育んでいきたいと思います。
参考文献
Searle, J. R. (1980). Minds, brains, and programs. Behavioral and Brain Sciences, 3(3), 417–457. https://doi.org/10.1017/S0140525X00005756
Friston, K. (2005). A theory of cortical responses. Philosophical Transactions of the Royal Society B: Biological Sciences, 360(1456), 815–836. https://doi.org/10.1098/rstb.2005.1622
Tang, Y. Y., Hölzel, B. K., & Posner, M. I. (2015). The neuroscience of mindfulness meditation. Nature Reviews Neuroscience, 16(4), 213–225. https://doi.org/10.1038/nrn3916
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