「マインドフルネスをやってみたいけれど、何をすればいいのか分からない」

そんな人も多いかもしれません。

座禅のように長時間座る必要があるのか。
頭を空っぽにしなければいけないのか。
呼吸は深くした方がいいのか。
毎日何分くらいやれば効果があるのか。

マインドフルネスについて調べるほど、「正しくやらなければ」と難しく感じてしまうこともあります。

でも、基本的な実践はとてもシンプルです。

何か一つに注意を向ける。
注意がそれたことに気づく。
そして、もう一度戻る。

まずは、ここから始めれば十分です。

この記事では、初心者でも実践できる基本的なマインドフルネスのやり方から、姿勢、呼吸、雑念への向き合い方、続け方、実践するときの注意点まで紹介します。

そもそも、マインドフルネスでは何をする?

マインドフルネスについては、マインドフルネスとは?意味・効果・やり方をわかりやすく解説で詳しく紹介しています。

ここでは、実践するときに何をしているのかを、できるだけシンプルに整理してみます。

「何も考えない」練習ではない

マインドフルネスを始めた人から、よくこんな言葉を聞きます。

「雑念ばかり浮かんで、全然できませんでした」

でも、思考が浮かぶこと自体は失敗ではありません。

人の心には、さまざまな考えが浮かびます。

今日の予定。
昨日あったこと。
これから食べたいもの。
仕事の心配。

マインドフルネスでは、それらを無理になくそうとはしません。

むしろ、

「今、考えごとをしていた」

と気づくことが、実践の一部です。

基本は「向ける・気づく・戻る」

たとえば、呼吸に注意を向けているとします。

最初は、

「息を吸っている」
「息を吐いている」

と感じています。

でも、いつの間にか、

「明日の会議、どうしよう」

と考えている。

そこで、

「あ、会議のことを考えていた」

と気づきます。

そして、もう一度呼吸に注意を戻します。

しばらくすると、また別のことを考えている。

また気づく。

また戻る。

この繰り返しです。

注意を向ける
それる
それたことに気づく
戻る
↻ この繰り返しが実践の基本

これが、マインドフルネス実践の基本的な流れです。

まずは1分、呼吸を使って実践してみましょう

では、実際に試してみましょう。

難しい準備は必要ありません。

椅子に座ったままでも構いません。

  1. 姿勢を整える。
    椅子に座り、足を床につけます。背筋は、無理にピンと伸ばさなくても大丈夫です。倒れない程度に身体を支えながら、少し楽に座れる姿勢を探します。手は膝や太ももの上など、自然な位置に置きます。目は閉じても、少し開けていても構いません。
  2. 呼吸に注意を向ける。
    次に、自分が呼吸していることに注意を向けます。呼吸を深くしようとする必要はありません。速くても、ゆっくりでも、そのときの呼吸をそのまま感じてみます。鼻の周りを空気が通る感覚、胸が動く感覚、お腹が膨らんだり縮んだりする感覚など、自分が感じやすいところを一つ選びます。
  3. 注意がそれたら、それに気づく。
    しばらくすると、別のことを考えているかもしれません。「ちゃんとできているかな」と考えていたり、外の音が気になっていたりするかもしれません。そのとき、「注意がそれていた」と気づきます。良い、悪いと評価する必要はありません。
  4. もう一度、呼吸へ戻る。
    そして、もう一度呼吸へ注意を向けます。それだけです。1分たったら、実践を終えます。もし時間があれば、2分、3分と続けても構いません。

姿勢は、どのくらい「正しく」する必要がある?

瞑想というと、

背筋をまっすぐ伸ばし、

足を組み、

手を決まった形にし、

微動だにせず座る。

そんなイメージを持っている人もいるかもしれません。

でも、マインドフルネスを始めるために、特定の座法を完璧に身につける必要はありません。

椅子でも床でも構わない

初心者には、椅子を使う方法もおすすめです。

足を床につけ、身体を安定させます。

床に座る方が楽なら、クッションなどを使って座ってもよいでしょう。

大切なのは、見た目よりも、

「今、この姿勢で身体に何が起きているかに気づけること」

です。

「良い姿勢」にしようと頑張りすぎない

背筋を伸ばそうとして、

肩に力が入る。
腰が痛くなる。
姿勢のことばかり気になる。

それでは、かえって実践が苦しくなることがあります。

身体を支えられる範囲で姿勢を整え、必要なら途中で座り直しても構いません。

目は閉じなくてもよい

目を閉じると集中しやすい人もいます。

反対に、目を閉じることで不安を感じたり、眠くなったりする人もいます。

その場合は、少し前方へ視線を落とし、目を開けたまま行っても構いません。

「こうしなければマインドフルネスではない」と形にこだわりすぎないことも大切です。

雑念が浮かんでも、失敗ではない

マインドフルネスを始めると、「雑念ばかり浮かんで、うまくできない」と感じることがあります。

でも、雑念が浮かぶこと自体は失敗ではありません。

たとえば、呼吸に注意を向けていたのに、いつの間にか仕事のことを考えていたとします。そこで「今、考えごとをしていた」と気づき、もう一度呼吸へ注意を戻します。

POINT

注意がそれたことに気づき、戻ることも、マインドフルネスの実践の一部です。

大切なのは、雑念をなくすことではありません。注意がそれたときに、そのことに気づき、再び注意を戻していくことです。

雑念をなくそうとしない

「考えないようにしよう」とすると、かえって考えが気になってしまうことがあります。

さらに、「考えてはいけない」「また考えてしまった」と評価し始めると、瞑想の時間が自分を採点する時間になってしまいます。

思考が浮かんだら、「今、考えていた」と気づき、もう一度呼吸へ注意を戻します。

またそれたら、また気づいて戻る。その繰り返しで構いません。

集中できた時間の長さで評価しない

「5分間ずっと呼吸に集中できたら成功」と考えると、注意がそれるたびに「できなかった」と感じることになります。

でも、マインドフルネスは、どれだけ長く集中し続けられるかを競うものではありません。

注意がそれたことに気づき、戻る。

そのプロセスそのものを大切にしてみてください。

呼吸を使った実践以外にも、マインドフルネスはできる

呼吸を使った実践(呼吸瞑想)は、初心者にとって取り組みやすい対象の一つです。

でも、マインドフルネスの実践は、呼吸瞑想だけではありません。

呼吸瞑想を含め、他の実践方法についてもいくつかご紹介します。

呼吸瞑想

呼吸の感覚に注意を向ける代表的な実践です。

いつでも自分と一緒にある呼吸を使えるため、特別な道具が必要ありません。

ボディスキャン瞑想

身体の各部分に順番に注意を向けていく実践です。

足、脚、腹部、胸、肩、顔など、そのときに感じている身体感覚に気づいていきます。

身体をリラックスさせることが必ずしも目的ではなく、身体に何を感じているかに気づくことを大切にします。

歩行瞑想

歩くという日常的な動作を使う実践です。

足が床に触れる感覚。

身体が移動する感覚。

一歩一歩に注意を向けます。

座って行う瞑想が苦手な人にも取り組みやすい場合があります。

日常や仕事の中で行う短い実践もあります。

仕事を始める前に自分の状態を確認する
会議中に自分が反応していることに気づく
タスクを切り替えるときに数秒だけ呼吸へ注意を向ける

など、決められた瞑想時間の外でも実践できます。

これらの実践方法についても、今後それぞれ別の記事で詳しく紹介していく予定です。

どのくらいの時間、実践すればいい?

「1日何分やればいいですか?」

これも、よく聞かれる質問です。

結論から言えば、すべての人に共通する「正解の時間」があるわけではありません。

まずは短い時間から、続けられる形をつくる

初心者の方が「毎日30分瞑想する」と決めても、それが負担になって続かなければ、実践そのものから遠ざかってしまいます。

まずは1分、3分、5分など、日常生活の中で無理なく続けられる時間から始めてもよいでしょう。

最初から1回の時間を長くすることよりも、まずは実践を生活の中に取り入れ、継続できる形をつくることが大切です。

近年の研究では、瞑想の実践時間だけでなく、どのくらいの頻度で実践するかも重要である可能性が示されています。

また、人の脳には経験や学習に応じて変化する「可塑性」があります。マインドフルネスについても、継続的な実践と脳の構造や機能の変化との関連が研究されています。ただし、研究方法や結果にはばらつきがあり、「何分を何日続ければ脳がこう変わる」と単純に言える段階ではありません。

なお、短時間の実践が、MBSRなど一定期間にわたって体系的に行われるプログラムと同じ効果を持つという意味ではありません。

「研究ではどのような実践が行われているか」と、「自分が日常の中で継続するために何分から始めるか」は、分けて考えることが大切です。

時間より「続けられる形」を探す

10分を3日でやめるより、1分でも生活の中に置ける方が、自分なりの実践習慣をつくりやすいかもしれません。

一方で、慣れてきたら少し時間を伸ばしたり、体系的なプログラムに参加したりすることもできます。

「短ければ十分」でも、

「長くやらなければ意味がない」

でもありません。

自分の目的や状況に合わせて考えていきます。

研究では、家庭でのマインドフルネス実践量と介入効果の関連を調べたレビューもあり、小さいながら関連が報告されていますが、実践量と効果の関係については研究結果が一様ではありません。

マインドフルネスを続けるためのコツ

習慣にしようと思っても、

「忙しくて忘れてしまった」

となることはあります。

そんなとき、自分の意志の弱さだけで説明しない方が続けやすくなります。

「いつやるか」を決めておく

たとえば、

朝起きたら1分。
コーヒーを飲む前に3分。
仕事を始める前に1分。
昼休みに5分。

というように、すでにある生活の流れと組み合わせてみます。

毎回、

「今日はいつやろう?」

と決める必要がなくなります。

ハードルを上げすぎない

「今日は10分できた。だから明日も10分やらなければ。」

と考えると、忙しい日にできなくなります。

そんな日は、

「今日は1分だけ」

でもよいでしょう。

続けることそのものを義務にして、実践が新しいストレスになる必要はありません。

できなかった日も評価しすぎない

「3日もできなかった」

と気づいた。

それも一つの気づきです。

では、今日からまた始める。

マインドフルネスの実践そのものと同じで、

それたら、戻る。

習慣づくりも、それくらいの捉え方でよいのかもしれません。

「うまくできない」と感じたとき

眠くなります

眠気が出ることはあります。

姿勢を少し起こしたり、目を開けたりしてみてもよいでしょう。

それでも強く眠いなら、そもそも身体が休息を必要としている可能性もあります。

瞑想を使って眠気を克服しなければならないわけではありません。

落ち着きません

マインドフルネスをすると必ず落ち着く、というわけではありません。

静かに座ることで、それまで気づかなかった不安や焦りを感じることもあります。

「今、落ち着かない」

と気づくことも実践の一部です。

無理に続ける必要はありません。

身体が気になります

痛みやかゆみなどが気になることがあります。

すぐ動いてはいけない、というルールはありません。

まず、

「痛みがある」

と気づいてみる。

そのうえで、姿勢を変えた方がよければ変えます。

我慢することがマインドフルネスではありません。

考え事ばかりします

大丈夫です。

考え事に気づいたら、呼吸などの対象へ戻ります。

何十回それても、何十回戻ればよいのです。

実践するときに知っておきたいこと

マインドフルネスは比較的安全な介入として扱われることが多い一方、どんな人にとっても、どんな状況でも、不快な経験が起こらないわけではありません。

研究では、マインドフルネスを含む瞑想実践に伴う望ましくない体験や有害事象も報告されています。また、研究によって定義や測定方法が異なるため、その頻度や重症度の解釈には注意が必要です。

無理に続けなくてよい

留意点

実践中に、強い不安、つらい記憶、強い身体的不快感などが生じた場合、「マインドフルネスだから受け入れなければ」と無理に続ける必要はありません。目を開ける、立ち上がる、周囲を見る、実践をやめる。そうした選択もできます。

長時間の実践ほどよいわけではない

初心者向けの短い実践と、長時間・高強度の瞑想は同じものではありません。

近年は、瞑想の強度や実践環境、参加者の状態によってリスクが異なる可能性も議論されています。

「長くやればやるほど効果が高い」

と単純に考えないことが大切です。

必要なら、経験のある指導者や専門家へ

体系的に学びたい場合は、経験のある指導者のもとで実践する方法もあります。

また、強い心理的苦痛が続いている場合などは、マインドフルネスだけで対処しようとせず、必要に応じて医療・心理の専門家へ相談することも大切です。

瞑想の時間だけがマインドフルネスではない

ここまで「実践方法」として瞑想を中心に紹介してきました。

でも、マインドフルネスは座っている時間だけのものではありません。

食べるとき

スマートフォンを見ながら食べるのではなく、

味。
香り。
食感。

に注意を向けてみる。

歩くとき

目的地のことだけを考えるのではなく、

足裏が地面に触れる感覚。

身体が前へ動く感覚。

周囲の音。

に気づいてみる。

人と話すとき

相手の話を聞きながら、

「次に何を言おう」

と考えている自分に気づく。

そして、もう一度相手の言葉へ注意を戻す。

仕事をするとき

焦って作業している。

同僚の発言にイライラしている。

同じメールを何度も読み直している。

そんな自分の状態に気づく。

マインドフルネスの対象は、生活の中にたくさんあります。

「うまくやる」より、気づいて戻る

マインドフルネスを始めると、

「正しくできているだろうか」

と気になることがあります。

でも、

ずっと集中できたか。
何分できたか。
リラックスできたか。

だけで評価する必要はありません。

呼吸に注意を向けた。
考え事をしていた。
それに気づいた。
また戻った。

それだけでも、マインドフルネスの基本的な実践です。

向ける。
それる。
気づく。
戻る。

この繰り返しを通して、自分が今どこに注意を向け、何を考え、何を感じているのかに少しずつ気づいていきます。

そして、その「気づく」という力は、瞑想の時間だけではなく、仕事、人との関係、日常生活にもつながっていきます。

まずは今日、1分だけ。

呼吸に注意を向けてみるところから始めてみてください。