「マインドフルネスをやってみたいけれど、瞑想する時間がない」仕事をしていると、そう感じることもあるかもしれません。
マインドフルネスの実践には、必ずしも長い時間が必要なわけではありません。仕事の合間に1分だけ立ち止まり、呼吸や身体感覚に注意を向けることも、マインドフルネスを日常に取り入れる一つの方法です。基本的な実践方法については、マインドフルネスのやり方|初心者のための実践ガイドでも紹介しています。
ただし、「1分やればストレスがなくなる」「集中力が高まる」という意味ではありません。
1分間の実践で大切なのは、何か特別な状態になることではなく、今、自分に何が起きているのかに気づくことです。
1分間のマインドフルネスをやってみよう
椅子に座ったままで構いません。特別な姿勢をとったり、静かな場所へ移動したりする必要もありません。
まず、今している作業をいったん止めます。背もたれに寄りかかっていても構いませんが、できれば身体が安定する姿勢をとります。目は閉じても、開けたままでも構いません。
そして、自分の呼吸に注意を向けます。呼吸を深くしたり、ゆっくりにしたりする必要はありません。今、自然に起きている呼吸をそのまま感じてみます。
鼻を空気が通る感覚。胸やお腹が動く感覚。息を吸っている感覚と、吐いている感覚。感じやすいところに注意を向けます。
そのまま、しばらく呼吸を感じてみましょう。
手順を整理すると
- 作業をいったん止める。
今している作業をいったん止めます。背もたれに寄りかかっていても構いませんが、できれば身体が安定する姿勢をとります。目は閉じても、開けたままでも構いません。 - 自然な呼吸に注意を向ける。
呼吸を深くしたり、ゆっくりにしたりする必要はありません。今、自然に起きている呼吸をそのまま感じてみます。 - 注意がそれたら、それに気づく。
考えごとをしていたことに気づいたら、「今、考えていた」と、そのことに気づきます。 - もう一度、呼吸へ戻る。
もう一度呼吸へ注意を戻します。雑念をなくそうとする必要はありません。 - 身体全体と今の状態に気づき、仕事へ戻る。
椅子に触れている身体の感覚、床についている足の感覚、周囲の音へ注意を広げ、今の自分の状態を少し確認してから、仕事を再開します。
考えごとが浮かんでも、そのままで大丈夫
呼吸に注意を向けていると、「このあとメールを返さないと」「さっきの会議、あれでよかったかな」など、さまざまな考えが浮かんでくるかもしれません。
それは失敗ではありません。
考えごとをしていたことに気づいたら、「今、考えていた」と、そのことに気づき、もう一度呼吸へ注意を戻します。
このプロセスも、マインドフルネスの実践の一部です。
雑念をなくそうとする必要はありません。注意がそれたことに気づき、また戻る。それを繰り返します。
注意がそれる仕組みについては、マインドフルネスで集中力は高まる?注意がそれる仕組みと研究から分かっていることでも詳しく解説しています。
1分たったら、仕事へ戻る
1分ほど経ったら、呼吸だけでなく、身体全体へ注意を広げてみます。
椅子に触れている身体の感覚。床についている足の感覚。周囲の音。そして、今の自分の状態を少し確認します。
「少し焦っている」「肩に力が入っている」「思っていたより疲れている」「次の仕事のことばかり考えていた」何かに気づくかもしれません。
もちろん、特に何も感じないこともあります。それでも構いません。
最後に、これから行うことへ注意を戻し、仕事を再開します。
1分で「リラックスしよう」としなくていい
マインドフルネスというと、「心を落ち着かせる」「リラックスする」ための方法だと思われることがあります。実際、実践したあとに落ち着いた感覚になることはあります。しかし、それを目標にする必要はありません。
たとえば、仕事でかなり焦っているときに1分間実践しても、焦りがなくならないこともあります。
大切なのは、焦りをなくすことではなく、「今、自分は焦っている」と気づくことです。
気づけば、「このまま急いで返信するより、一度内容を確認しよう」「少し休んだ方がよさそうだ」「優先順位を整理してから始めよう」と、次にどうするかを考える余地が生まれます。
マインドフルネスは、特定の感情をつくるためではなく、今起きていることに気づくための実践です。
仕事のどんな場面で取り入れられる?
1分間の実践は、「瞑想の時間」を新しく確保しなくても、仕事の切れ目に取り入れることができます。
- パソコンを立ち上げたあと
- 会議が始まる前
- 一つの仕事を終えて、次の仕事へ移るとき
- 昼休みから仕事へ戻るとき
- メールやチャットに反応する前
- オンライン会議が続く合間
などです。特に取り入れやすいのは、一つの行動から次の行動へ移るタイミングです。
仕事中は、一つのことを終えた瞬間に次のことを考え始め、そのまま一日が進んでいくことがあります。
その切れ目に1分だけ立ち止まることで、「今、どんな状態で次の仕事へ向かおうとしているのか」に気づく時間をつくることができます。
仕事の中でマインドフルネスを取り入れる意味については、仕事とマインドフルネス|働く中で「気づくこと」は何を変えるのかでも詳しく扱っています。
1分と決めなくてもいい
ここまで「1分マインドフルネス」として紹介してきましたが、正確に60秒である必要はありません。30秒でも構いませんし、時間があれば3分、5分と続けても構いません。
重要なのは、1分という数字そのものではありません。1分という短い時間にしているのは、忙しい日常の中でも実践を始めやすくするためです。
「瞑想するなら20分はやらなければ」と思うと、仕事が忙しい日は実践そのものをやめてしまうかもしれません。
それよりも、仕事の中に短い時間をつくり、立ち止まる→気づく→戻るという経験を重ねることに意味があります。
短いマインドフルネスにも効果はある?
短時間のマインドフルネスについても研究が行われています。
2019年のシステマティックレビューでは、短時間のマインドフルネス介入を扱った85研究が検討され、多くの研究で心理的・健康関連の指標の少なくとも一つに変化が報告されました。中には、一度の実践や5分程度の介入を扱った研究も含まれています。
一方、研究でいう「短時間の介入」は内容や期間がさまざまで、日常生活で1分間呼吸に注意を向けることと同じではありません。
また、短いマインドフルネス誘導と認知機能との関係を調べたメタ分析では、全体として小さな効果が報告されていますが、注意や記憶などすべての認知機能で明確な効果が確認されたわけではなく、研究方法上の課題も指摘されています。
したがって、「1分間実践すれば、ストレスが減る」「集中力が高まる」と考えるのは適切ではありません。短時間の実践は、MBSRなど一定期間にわたって体系的に行われるプログラムと同じものでもありません。
1分間の実践は、効果を保証する「最短時間」ではなく、日常の中でマインドフルネスを実践するための一つの方法として捉えるのがよいでしょう。
続けるなら、日常の行動と組み合わせる
「時間があるときにやろう」と思っていると、忙しい日ほど忘れてしまいます。そこで、すでに毎日行っていることと組み合わせる方法があります。
たとえば、「パソコンを立ち上げたら1分」「午後の仕事を始める前に1分」「オンライン会議が終わったら1分」と決めておきます。
新しく「瞑想の時間」をつくるというより、いつもの行動の中に短い実践を組み込むイメージです。
毎回うまくできる必要もありません。できなかった日があっても、次に思い出したときにまた行えばよいでしょう。
忙しいときほど、1分も取れない?
仕事が本当に忙しいと、「1分すら惜しい」と感じることがあります。そのようなときに、無理にマインドフルネスをする必要はありません。
また、仕事量が過剰だったり、休憩を取れない状態が続いていたりする場合、その問題を個人のマインドフルネスだけで解決することはできません。
「忙しいから、もっとマインドフルネスをしなければ」と考えるのではなく、「なぜ1分も立ち止まれない状態になっているのだろう」と考えることも大切です。
マインドフルネスによって自分の状態に気づくことが、仕事量や働き方、周囲との関係を見直すきっかけになることもあります。職場環境や仕事量とストレスの関係については、職場ストレスはなぜ生まれる?個人と組織の両面から考えるで詳しく扱っています。
まとめ|1分は、自分の状態に気づくための小さな区切り
1分間のマインドフルネスで、仕事上の問題がすべて解決するわけではありません。ストレスがなくなるわけでも、常に集中できるようになるわけでもありません。
それでも、仕事を続けている途中で、いったん止まる。今起きていることに注意を向ける。自分の状態に気づく。そして、次の行動へ戻る。そのための時間をつくることはできます。
忙しい仕事の中では、自分が焦っていることにも、疲れていることにも気づかないまま、次々と行動してしまうことがあります。
1分という短い時間は、その流れを一度区切るためのきっかけです。
「うまく瞑想しよう」とする必要はありません。まずは仕事の切れ目に1分だけ、今の呼吸と自分の状態に注意を向けてみてください。
