会議では誰も反対しなかったのに、あとになって不満が出てくる。ある人の発言をきっかけに、議論が内容ではなく「誰が言ったか」の問題になっていく。忙しさの中で、メンバーが抱えている懸念や違和感に気づかないまま仕事が進む。

チームでは、一人ひとりの注意や感情だけでなく、メンバー同士の関係や、繰り返されているやり取りのパターンが仕事の進み方に影響します。

そのため、職場でマインドフルネスを活かすときも、個人が自分の内側に気づくことだけでなく、チームの中で今何が起きているのかに気づくという視点が重要になります。

チームにマインドフルネスを取り入れるとは?

チームへのマインドフルネス導入というと、会議の前に全員で1分間呼吸に注意を向けたり、研修で瞑想を体験したりする方法があります。こうした実践には、個人の注意を整え、自分の状態に気づくという意味があります。

ただし、チームへの導入を「全員が同じ瞑想をすること」だけで捉えると、チームで働くという側面が抜け落ちます。

チームでは、誰が話しているのか、誰の意見が聞かれていないのか、議論が事実から離れていないか、緊張が高まっていないか、同じ問題が何度も繰り返されていないか、といったことも起きています。

POINT

チームにマインドフルネスを取り入れるとは、個人の注意を整えるだけでなく、チームのやり取りそのものを「気づきの対象」にしていくことでもあります。

個人の実践が集まれば、チーム・マインドフルネスになる?

チームの全員が個人としてマインドフルであれば、チームも自動的にマインドフルになるのでしょうか。研究上は、そのように単純には考えられていません。

個人のマインドフルネスは、一人ひとりが現在の経験にどのように注意を向けているかを扱います。一方、チーム・マインドフルネスは、メンバー同士の相互作用にどのような特徴があるかという、チームレベルの概念です。

個人のマインドフルネス自分の注意・思考・感情・身体感覚など、現在の経験に気づく
チーム・マインドフルネスチームのやり取りの中で、今起きていることに注意を向け、早い決めつけを避けながら経験を捉える

たとえば、個々のメンバーが瞑想をしていても、会議では一部の人だけが話し、異論をすぐ否定し、失敗を責める文化が続いているなら、チームの相互作用が変わったとは言えません。

チーム・マインドフルネスとは何か

YuとZellmer-Bruhn(2018)は、チーム・マインドフルネスを、チーム内の相互作用が「現在起きていることへの注意と気づき」と、「チーム内の経験をすぐに評価・判断せずに捉えること」によって特徴づけられているという、メンバー間の共有された認識として整理しました。

TEAM MINDFULNESS

チームの中で、今起きていることに注意を向け、メンバー同士の経験を早い決めつけで処理せずに扱うことが、やり取りの特徴として共有されている状態。

ここで重要なのは、「一人だけが意識している」ことではなく、チームのやり取りに一定の共通パターンが生まれていることです。たとえば、意見が出たときにすぐ評価するのではなく、まず内容を理解しようとする。問題が起きたときに誰かを責める前に、実際に何が起きたのかを確認する。そうした相互作用が繰り返されることで、チームの特徴になっていきます。

似た言葉との区別

組織研究には「collective mindfulness(集合的・組織的マインドフルネス)」という別の研究系譜もあります。これは高信頼性組織の研究から発展し、異常の兆候や予期せぬ事態を組織として察知し、対応するプロセスを扱う概念です。「チーム全員が瞑想すること」と同義ではなく、本記事で扱うチーム・マインドフルネスとも区別されます。

チームでは、何に「気づく」のか

個人のマインドフルネスでは、自分の注意、思考、感情、身体感覚などに気づきます。チームでは、それに加えて、メンバー同士の間で生じていることにも視野を広げます。

今の状況何が事実として起きているか。前提や思い込みだけで話が進んでいないか。
関係性誰が話しているか、誰が黙っているか。緊張や遠慮、反発が生まれていないか。
チームのパターンいつも同じ人が決める、問題が起きると責任追及になるなど、繰り返される流れはないか。

こうしたことに気づいたからといって、すぐに問題が解決するわけではありません。ただ、見えていなかったパターンが見えるようになると、「いつものやり方」をそのまま繰り返す以外の選択肢を考えられるようになります。

意見の違いを、すぐに人間関係の問題にしない

チームでは、仕事の進め方や優先順位について意見が違うことがあります。こうした「課題についての違い」は、必ずしも悪いものではありません。

しかし、「この案には反対です」という話が、「あの人はいつも否定的だ」「自分のことを尊重していない」といった人間関係の対立に変わっていくことがあります。

チーム・マインドフルネスの研究では、課題についての対立が人間関係の対立へ変化することを抑える可能性が検討されています。ここでもポイントは、「対立をなくす」ことではありません。意見の違いをすぐに相手の人格や関係性の問題として処理せず、何について意見が違っているのかを見続けられることです。

これは、マインドフル・コミュニケーションや、「反応する」と「応答する」の違いで扱った考え方を、チーム全体へ広げたものとも言えます。

心理的安全性とは同じものではない

チーム・マインドフルネスは、心理的安全性と関係の深いテーマですが、同じ概念ではありません。

心理的安全性質問する、異論を言う、失敗を認めるなど、対人リスクを取っても大丈夫だとチームで感じられること
チーム・マインドフルネスチームの相互作用の中で、現在起きていることに注意を向け、すぐに評価・判断せずに経験を扱うこと

たとえば、意見を言っても不利益を受けない環境があっても、互いの話をほとんど聞かず、既存の前提のまま議論が進むことはあり得ます。逆に、丁寧に話を聞く習慣があっても、上司への異論が実際には評価に響くなら、心理的安全性は高いとは言えません。

両者を分けて考えることで、心理的安全性を個人の心の状態だけに還元せず、チームの環境と相互作用の両方を見ることができます。

チームで試せる4つの実践

チーム・マインドフルネスを高める「唯一の方法」が確立しているわけではありません。ここでは、チームの相互作用を気づきの対象にするという考え方から、日常の仕事に取り入れやすい方法を整理します。

  1. 会議の最初に、今の状態をそろえる
    1分間静かに呼吸へ注意を向ける方法でも、「今日この会議で確認したいこと」を一言ずつ共有する方法でも構いません。目的は儀式化ではなく、注意を今の場へ戻すことです。
  2. 意見を評価する前に、まず理解する
    反対意見が出たとき、「賛成か反対か」をすぐ決めず、「何を懸念しているのか」「どの前提が違うのか」を確認します。
  3. 内容だけでなく、対話のプロセスを見る
    「同じ人だけが話していないか」「誰かの発言のあと急に沈黙していないか」など、会議の進み方そのものにも注意を向けます。
  4. 終わったあとに、起きたことを振り返る
    「何を決めたか」だけでなく、「話しやすかったか」「見落としていた視点はなかったか」を短く確認します。

大切なのは、実践そのものを守ることではありません。気づく → 対話する → 試す → 起きたことを見る → また考えるという循環をつくることです。

個人の実践を、チームの環境とあわせて考える

チームにマインドフルネスを取り入れるとき、個人に「もっと冷静に」「もっと受容的に」と求めるだけでは不十分です。

たとえば、発言した人が不利益を受ける評価制度、慢性的に余裕のない仕事量、上位者が結論を事実上決めている会議、失敗を責めるマネジメントがあるなら、メンバーが注意深くなっても、対話のパターンは変わりにくいでしょう。

チーム施策として考えるときの注意

マインドフルネスは、メンバーが問題のある環境へ適応するための技術ではありません。個人の気づきと同時に、会議の設計、役割、権限、評価、リーダーの言動など、チームを取り巻く条件にも目を向ける必要があります。

マインドフルネスと組織開発で扱っているように、個人から関係性、チーム、組織へと視野を広げることで、問題を誰か一人の性格や能力だけに帰属せずに考えやすくなります。

研究では何が分かっている?

チーム・マインドフルネスは、個人レベルのマインドフルネスに比べると比較的新しい研究領域です。近年は、葛藤、チームの結束、情報共有、レジリエンス、パフォーマンスなどとの関係が検討されていますが、まだ研究蓄積は十分とは言えません。

研究から:課題の対立が、人間関係の対立へ広がることとの関係

YuとZellmer-Bruhn(2018)は、3つの複数時点のフィールド研究を通してチーム・マインドフルネスを検討しました。チーム・マインドフルネスが高いほど関係性の葛藤が少なく、課題についての葛藤が関係性の葛藤へ変化する結びつきも弱いことが報告されています。また、チームの関係性の葛藤が個人間の足の引っ張り合いへ波及することも弱めていました。

研究から:情報共有と感情的サポートを通じたレジリエンス

Fengら(2025)は、事業変革中の企業で176の製造チームを対象にした複数時点・複数情報源の調査と、84の営業チームを対象にしたフィールド実験を行いました。チーム・マインドフルネスは、情報共有と感情的サポートを通じてチームのレジリエンスと関係しており、この関係はメンバー同士の仕事の相互依存性が高い場合に強くみられました。

研究から:チームの結束とパフォーマンスとの関連

Majeedら(2023)は、プロジェクト型組織で働く379人を対象とした時間差調査で、チーム・マインドフルネスとプロジェクトチームのパフォーマンスとの関係を検討しました。結果では、チームの結束がその関係を媒介し、リーダーシップのあり方も関係の強さに影響していました。ただし、介入研究ではないため、チーム・マインドフルネスが直接パフォーマンスを高めたと因果的に結論づけることはできません。

これらの研究から、チーム・マインドフルネスは、単にメンバーを落ち着かせるというより、意見の違いを扱うこと、情報を共有すること、互いを支えること、状況変化に対応することと関係する可能性が見えてきます。一方で、どの実践がどのようなチームで有効なのか、長期的にどの程度変化が続くのかについては、さらに研究が必要です。

まとめ|個人の気づきを、チームの対話と行動へつなげる

チームにマインドフルネスを取り入れることは、全員で瞑想することだけではありません。個人が自分の状態に気づくことに加えて、チームの中で今何が起きているのか、どのようなやり取りが繰り返されているのかに注意を向けることが重要です。

チーム・マインドフルネスでは、意見の違いや感情をなくすことを目指すのではなく、それらが生じたときに早い決めつけに流れず、状況を見ながら対話を続けることに目を向けます。

そして、個人の気づきをチームの変化につなげるためには、実践する人だけではなく、会議の進め方、リーダーの行動、役割や制度などの環境も同時に見る必要があります。マインドフルネスを「個人を整える方法」で終わらせず、関係性と組織を見るための入口にすることが、チームで活かすうえでの重要な視点です。